防災・減災ガイド

地震前の「異常現象」は予知に活かせるのか?防災・減災へはどう役立てれば良いか?

地震予知に『異常現象』の発見は活かせるのか?

急に野生動物が騒ぎ出す、浜辺で魚が大量死している、妙な色や形をした雲を見かけた、なにか異臭がする、井戸水や温泉の水質や水量が突然変化した・・・など、災害発生前には様々な異常現象が報告されています。

しかしながら科学的に未解明なところがまだ多く、公的な意味では地震予知に活かすことはまだできません。この点、気象庁からもアナウンスがなされています

・動物や植物は地震を予知できるのですか?
動植物は地震以外の理由によって通常と異なる行動・反応をすることがあり、また、動植物自体についてまだわかっていないことも多く、ましてや地震の前兆現象も解明できていない部分が多いことから、地震の前にそうした異常行動・反応をする理由について科学的に説明できていない状況です(気象庁 地震予知について)。

わかりやすく言えば、『野生生物が普段とは違う騒ぎ方をしていたので電車を全線運休します!』と社会全体へ発信すれば、動物が騒ぐたびに社会的な混乱を起こすこととなり、生活に多大な影響を与えてしまいます。

個人の防災意識を向上へのきっかけにしてみる

一方で、個人の防災意識を高めるきっかけ程度には活かすことが出来るかと思います。

もし異常現象を目にして災害に関連性しそうな危機感が出たならば、次のような取り組みにつなげてはどうでしょうか。

  • 普段よりも多めに防災グッズをカバンに入れる
  • 飲料水や生活用水向けにポリタンクや浴槽へ貯水しておく
  • ハザードマップを最新にして避難先を再確認する
  • 避難時に邪魔にならないか部屋を整理整頓する

これなら手間もあまり増えず、個人で取り組む分には第三者への無用な混乱にもつながりません。仮に、本当に災害が起きたとしても減災にもなります。

異常現象を確認しても「地震が起きるはず!」「いやこれは起きない!」と、確かめられないことに、無理やり判断をつけようとこだわらない事が大切です。

異常現象に振り回されないバランス感覚が必要

異常現象を確認した時「さすがに心配しすぎじゃない?」とか「これは地震の予兆だ・・・!」と様々な反応がでると思います。

全く危機意識がないと?

「災害なんてこない」「自分はうまく避難できる」という意識が支配しやすくなり、いざ災害が起きたときにスムーズに動けなくなります。災害時の心理学として正常性バイアスとも呼ばれる現象で、避難行動にも遅れが出て命を落とすことに繋がってしまいます。

異常現象の有無にこだわり過ぎると?

今度は異常現象に過剰反応してしまって「災害には前兆があるものだ」といった先入観が先行しやすくなり、前兆なく起きた災害に対して対応を誤る原因につながります。結果として前述の正常性バイアスと似た状況に陥りやすくなるでしょう。

繰り返しとなりますが、異常現象が確認されても災害が起きるかどうかを『当てに行く』ことが重要ではない点に注意しましょう。

地震の予兆だと心配された異常現象の事例

Twitterでもトレンド入りした『地震雲』の出現

妙な色・形をしていたり、普段見慣れぬ雲からTwitterでは『地震雲』と名付けられてツイートされトレンド入りすることがあります。

地震雲は一般の人にとっては異常現象に捉えられがちですが、気象庁もSNS上で話題になりすぎについて下記のように対応しています。

「地震雲」が無いと言いきるのは難しいですが、仮に「地震雲」があるとしても、「地震雲」とはどのような雲で、地震とどのような関係で現れるのか、科学的な説明がなされていない状態です。 ~(中略)~ 形の変わった雲と地震の発生は、一定頻度で発生する全く関連のない二つの現象が、見かけ上そのように結びつけられることがあるという程度のことであり、現時点では科学的な扱いは出来ていません。
気象庁 地震予知について 地震雲はあるのですか?

気象庁気象研究所 荒木健太郎 氏も「地震雲」を不安に思われている方へ にて呼びかけているほか、同氏のYouTubeチャンネルでも解説されています。

地震の前兆につながるような雲はまだ存在しません。

とはいえ、全国で様々な災害な発生したり、実害は出ずとも何度も小規模な地震が発生したりすると「もしかしたら大きな地震がくるかも・・・」などと不安や恐怖心に悩まされることはあると思います。

こうしたモヤモヤとくる不安は具体的な災害への備えにつなげていくことで和らいでいくと思います。人は理論や理屈だけでは動くことが出来ない・判断が出来ない場面もありますので、「地震がくるなら何を備えていくべきか?」という点に意識を向けていきましょう