防災・減災ガイド

地震対策グッズで家具の固定は万全か?被災家屋でわかる転倒防止よりも大事な事とは

地震対策グッズだけに頼るのがNGな理由とは?

被害拡大原因の一つに『家具の多さ』がある

地震対策グッズとして突っ張り棒や、、、色々販売されていて、自治体も設置するように推奨しています。しかし、転倒防止すべき家具が多いと住宅の構造的な問題で固定仕切れていない家具も発生してきます。

まずは家具が転倒した場合にどうなるか、下記の写真を参考にしてみてください。こちらは2016年に発生した熊本地震の被災家屋です。

このように家具が多い状態で震災に遭えば家具の下敷きになったり、避難行動に支障が出やすくなります。

そうならないために・・・、地震対策グッズで家具を固定して転倒防止を行うわけですが、家具が増えてくると固定自体も難しくなってきます。

つい家具を積み重ねてしまう

家具や商品を買っていくと適切に固定できるスペースがなくなっていき、最終的には不安定な場所へ設置してしまうパターン。「ちょっと使わないからタンスの上へ」「見やすい位置に移動させたい」など無意識に積んでしまいがちです。

収納家具に商品を詰めすぎる

これは家具の重量増加につながり、強い揺れで地震対策グッズで踏ん張れないほどの力がかかってしまうパターンです。

キャスター付きの収納家具

バンドタイプの地震対策グッズで転倒防止できなくもないですが、キャスター付きを買うことは普段から移動させる事を前提としやすいので、キャスター付きを買った時点で固定するのを忘れ去っている可能性があります。

適切な固定場所が不足する

地震対策グッズの多くは建物の丈夫な部分、例えば柱や壁を支えている角材などに対してビス止めしたり、突っ張り棒で圧力をかけて支えています。家具が増えてくると効果的に家具を転倒防止できる場所が不足してきます。

さらに言えば、仮に、地震対策グッズの固定器具をすべての家具に取り付けたとしても、器具自体の信頼性や、住まい自体の耐震性低下(構造部分の強度低下など)といった問題も残るため、家具固定すれば万全というわけではありまん。

特に小さなお子さん、妊産婦、高齢者の方々が居住される生活空間においては、家具が転倒してしまった時の脅威はさらに高まります。

東京都の検証で突っ張り棒が壊れた事例あり

転倒防止効果はあるが、過剰な期待は禁物

東京都生活文化局消費生活部の商品テスト「家具転倒防止器具の性能」でも報告されている通り、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)の震度6強相当の揺れで器具で支えきれず、家具が転倒してしまいました。

また、検証の詳細レポートの表17や写真No.25(※PDF)では、突っ張り棒の脱落やネジ部の損傷も掲載されています

地震対策グッズの固定器具自体の信頼性、つまり製品としての性能については十分に検証されたものはほぼありません。

商品の価格帯としても雑貨に近いレベルですし、地震による揺れを抑える効果は確かにありますが、器具に頼り切ってしまうのは危険です。

繰り返しになりますが、地震対策グッズ自体には揺れを抑える効果はあります。

しかし、強固に固定するには環境が揃って実現できるものであり、固定できたとしても絶対に転倒しないわけではありません。「完璧に家具は固定されている。転倒は一切しない」という前提で家具を置きすぎないようにしましょう

逆に家具が一切ない部屋はどんな印象か?

安全な空間づくりには部屋の整理整頓から始めよう

下記は新築なのでピカピカなのは当然ですが、生活感がないレベルで家具がなかったとしたら先ほどのような危険性は当然でません。なにせ転倒する家具がないのですから。

※ご注意:「ミニマリストがベストだ!」と、おすすめする訳ではありません。

地震対策グッズで家具を固定すること自体は良いのですが、増えすぎた家具や使わなくなった商品を減らすことで、安全空間を増やし家具も強固に固定しやすくなります

ここまでガラガラの部屋は無理あるとしても、多すぎる家具を減らしたり、複数の家具を1つにまとめたり、使わなくなった商品を整理したり・・・物と共に家具の転倒リスクを減らすことが可能になります。

家具を減らすのに不安感が強い方はどうする?

急いでミニマリストになる必要性はありません

家具や買った商品を減らしていくとなると、「ミニマリストを目指して地震対策するしかないのか?」と感じるかもしれません。

確かに家具がほとんどないシンプルなお部屋では、飛んでくる家具自体が存在しないので地震対策という面では強力な手段です。

しかし、思い入れのある家財など自身の生活環境をいきなり空っぽの部屋へと変えてしまうのも、大きなストレスの原因になる場合があります(適応障害、認知症の加速リスクなど)。

「命を守ることを優先すべきだ」とするのはまったくもって正論ですが、それだけで行動できる人はなかなか出来ないものです。

特にお子さんの部屋や高齢になった親に対して事前にすり合わせをすることなく、お部屋を勝手に片付けてしまったりすると、家族で取り組むはずの防災がストレスにつながってしまいます。

捨て去るのでなく納戸へ移動させてみる

一時的に生活空間から家具が見えなくなることで、実際に減らしたときのストレスを確かめることができます。捨てていないので、仮に大きなストレスを感じたならば家具を元に戻すことができる安心感があります。

捨てるのではなく「まずは模様替え」からスタートすれば、家具を捨て去るという心理的なハードルを大きくさげることができます。

倉庫やトランクルームへ預ける

納戸の容積に余裕がなくても家具の移動が出来ることと、1ヶ月あたりの利用料金を支払い続けまでも家具を残しておくべきかを再認識するきっかけ作りになります。保管状態をあまり気にしないなら、ベランダや駐車場などへ小型収納庫を設置する手もあります。

フリマなどへ出品して誰かに使ってもらう

売却額には一切こだわらず、家具を捨てるのではなく誰かに使ってもらうことを優先することで自宅から離れる家財への感覚が変わるかもしれません。

ヤフオク、ジモティ、メルカリなどサービスも充実して配送手続きもしやすい便利な時代です。まだどれも使ったことがない方、身の回りに「メルカリ使ったことある?」といった具合に聞いてみる事から始めると良いでしょう。

そもそも転倒しにくい家具へ買い換える

背の高い家具の最上段に重い家財を詰め込めば転倒した時の衝撃は凄まじいものになりますが、高さが腰あたりまでのどっしりとした安定感のある家具であれば家具転倒のリスクを大きく減らすことができます。

もちろん、家具を少し減らしてみた時にポジティブに捉えられているのならば、シンプルな生活空間を目指すのも良いと思います。

家具移動の緊急性が高いものはあるか?

寝室、ドア、廊下付近の家具は特に注意!

東京都も下記のように解説動画を出されていますが、家具を減らしていく上で急いで対応すべきポイントとして寝室や避難通路上にある家具です。

1日の三分の一ほど寝室で過ごしている

睡眠時間が8時間程度だとすると寝室にはかなり時間を無防備な状態で過ごしています。

言うまでもなく、背の高い家具や重い家具がベッドへ倒れ込まないような位置へ移動させておきましょう。家具だけでなく、筋トレ用の器具やガラス製品など飛来した時に危険なものは沢山あります。

ドアや廊下付近には小さな家具も要注意

ドアや廊下など人が出入れするエリアには、例え小さな家具であっても避難に支障がでる可能性がありますので移動させておきましょう。例えば引き戸の扉部分が収まる部分に棒きれやゴミ箱が挟まるだけで慌てると思います。

開き戸(ドアが蝶番で手前に引けたり、奥へと開くタイプ)の場合はさらに支障が出やすく、ドアが開く方向へ本棚やタンスみたいな重量物が倒れ込むと、ドアを押して無理やり開くことも困難です。

避難経路の荷物で被害が拡大した歌舞伎町ビル火災

下記は震災とは異なりますが、避難経路上の荷物が原因で被害が拡大してしまったという点では、今回のテーマと類似します。

歌舞伎町ビル火災では44名も死亡し、どの犠牲者も逃げ場を失ったように倒れていたとのことでした。

この記事の冒頭に被災家屋の内部写真を思い出してもらいたいですが、もしここに居て埋もれるように家具に避難行動の邪魔になってしまったり、地震と共に火災が発生した場合はどうなっていたでしょうか?

地震対策グッズを設置するのもおすすめではありますが、まずは生活空間を整理整頓してより安全性を高めましょう。

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