防災グッズを入れるバッグは3種類ある
0次持ち出し袋 : 常に身につけておくバッグ
目的は何か | ・外出先で避難先まで行動しやすくする ・外出先で行動不能に陥らないようにする |
何を入れるか | ・LEDライト ・モバイルバッテリー ・充電用ケーブル ・ラジオ ・携行食(お菓子程度) ・常備薬 ・救急キット ・個包装アルコール綿 ・個包装精製水シート ・個包装マスク ・生理用品 ・洗って使えるペーパータオル ・ホイッスル ・ジップロック ・ポリ袋 ・アルミブランケット ・飲料水 ・簡易浄水器(ストロータイプ等) ・ハザードマップ(自治体提供品) ・帰宅困難者マップ(自治体提供品) ・筆記用具(マップへの書き込み) ・身分証明書など 状況に応じて防寒や猛暑対策 ・カイロ ・冷感タオル |
容量の目安 | 1~5リットル程度 |
バッグの形状 | ・ウエストポーチ ・ランニングポーチ ・ボディバッグ ・ショルダーバッグ ・サコッシュ ・その他、一般的なポーチ |
保管方法 | ・普段持ち歩くバッグに追加 ・身につけて活動する |
1次持ち出し袋 : 避難時に一緒に持ち歩くバッグ
目的は何か | ・避難先での安全性をより高める ・短期間の避難生活を支える |
何を入れるか | 0次持ち出し袋の予備拡充に加えて、 ・使い捨て着替え ・トイレ処理用品 ・予備メガネ ・給水袋 ・防寒具 ・猛暑対策グッズ ・エアマット、ウレタンマット ・レジャーシート ・レジャーシートを張る程度の紐 |
容量の目安 | 10~30リットル (※本人の体力・体格に合わせる) |
バッグの形状 | ・バックパック(リュック) ・ショルダーバッグ ・ナップザック |
保管方法 | ・寝室などに常備 ・避難行動に支障がでる場合は無理に持たない 参考:東日本大震災の津波警報解除は3日後だった 東北地方太平洋沖地震への 気象庁の対応(※PDF) |
2次持ち出し袋 :避難生活をサポートするバッグ
目的は何か | ・避難生活の長期化に備える |
何を入れるか | 0次、1次持ち出し袋の予備拡充に加えて、 ・テント(状況による) ・寝袋、寝具 ・コット(簡易ベッド) ・LEDランタン ・調理器具 ・衛生用品 ・生活用品 ・補修資材 |
容量の目安 | 30~70リットル (※本人の体力・体格に合わせる) |
バッグの形状 | ・バックパック ・ボストンバッグ ・キャリーケース ・コンテナ&キャリーカート |
保管方法 | ・納戸などに保管 ・自宅が2階以上あるなら最上階に保管 |
災害はどのタイミングで被災するかわかりません。特に遠方の出張や客先へ訪問する頻度が高かったり、週末の行動範囲が広い方は外出先で被災する機会が増えます。
また、ここではバッグとして紹介しましたが、車での移動時間が多ければ車内に防災グッズのバッグを積むこととなります。
ただし、JAFユーザーテストによれば夏場の車内は摂氏50度を超える場合があり、許容温度が低いモバイルバッテリーや可燃性の燃料などを積むと車輌火災に繋がる可能性があります。気温が上昇する季節は積み込む防災グッズを点検して入れ替えておきましょう。
防災用のバッグに求められる性能・仕様とは
防災グッズのバッグに耐火性や難燃性は必要?
防災用のバッグを選ぶ際は過剰性能や優先度の低い性能に注意しましょう。
例えば防災グッズのセット品によく見られる耐熱性が高そうな銀色のバッグ・・・。
なんとなく安心感の出るバッグに様々な防災グッズが入れられて販売される事が多いのですが、そもそもバッグが焼け焦げるような家屋にあるバッグを取りに行けるものでしょうか?
バッグに耐火性が求められるような地域を駆け抜ける必要が出たという最悪な状態だったとしたら、10~20kgもあるような防災グッズのバッグなんて気にせず、有毒な煙や火炎に晒される時間を最小限にする必要があります。
なので、防災グッズを入れるバッグとして火災対策を検討するくらいなら、
- 消火器、防火用水の用意
- 火災報知器の設置
- 難燃性の寝具や家財への切り替え
- 耐火性のある建材の採用
- 整理整頓(可燃物の排除)
- 老朽化した家電の点検
- 住宅設備や建材の再検討
といった火災への総合的な備えが重要になってくると思います。バッグだけが燃えにくくなっても、自宅が燃えてしまったら意味はありませんので・・・。
消防士が着る銀色の防火服で頼もしいイメージが頭に浮かびますが、バッグだけ耐火性や難燃性を高めてもその恩恵は薄いです。
防災グッズを入れるバッグとしては長期保管にも耐えたり、水害時や雨天時でも乾きやすかったり、なるべく水の侵入しない構造や防水性に気を使っているバッグのほうがメリットは大きいでしょう。
耐火性や難燃性よりも、防水性を重視したほうが実用的。紐で結ばれたナップザックよりも背負いやすく破損しにくいバックパック!
増える豪雨災害。撥水性バッグを選ぶべき?
撥水機能は水を弾く加工が施された素材なので多少の雨であれば、バッグの表面に丸い水玉ができて弾いている様子が見られます。
ただし、撥水能力もピンキリで、降雨量によっては水がしみ出してきたり、撥水素材が一部しか使われてなかったりするとファスナーやらサブポケットが水びだしになっている事も。
また、バッグの形・デザインによっても撥水性が意味をなさない場合があります。例えばファスナーの両サイドがきっちり閉まらないデザインや、フタの留め具もボタンタイプ、紐で縛るタイプといったものです。
風雨にさらされると傘が意味をなさないように、雨の粒が色んな方向から吹き込むためバッグの隙間から雨水が浸入してしまいます。
防水性能が高いバッグのデメリットも知っておく
素材によっては経年劣化しやすい場合あり
防水性能が高いバッグは水が滲んでこないようにコーティングされてあったり、縫い目から水が侵入しないようウェルダー溶着加工といった技術が用いられていたりします。
これ自体は防水性能が向上して十分メリットなのですが、保管状況によっては数年で経年劣化が激しくなり、ひどいと溶着部分が剥離する可能性があります。
特に、ポリウレタン(PU)素材やターポリン素材はご注意ください。
防水性は低くなりますが、厚手のナイロン素材(300Dや1000D等と厚みの表記がある場合もあります)だと安価で経年劣化も目立ちにくく丈夫です。また、仮に濡れても吸水しにくい素材であるため自然乾燥しやすいのも特徴です。
通勤カバンや趣味の登山のように普段から使っていれば劣化にも気づきやすいですが、防災グッズを詰め込んだバッグはその性質上、メンテナンス機会も少なくなりがちです。
避難時に「バッグがボロボロだった・・・」とならぬようにしましょう。
防水性能はジップロックやポリ袋で対応も可能
バッグの防水性能はあればベストですが必須条件というほどでもありません。
防災グッズの水損を防ぐにはバッグへ入れる前に旭化成ホームプロダクツ株式会社の『ジップロック』へ個別包装しておきましょう。
細かいポイントとしては『ジップロック フリーザーバッグ』のほうが厚手で気密性の高い製品に仕上がっています。
ナイロン100%のバッグだと雨天時には濡れますが、レインカバーも市販されていますし、急場しのぎならば別にポリ袋に包むだけでも対応は可能です。
家庭用のゴミ袋は0.01~0.03mmとかの薄手で破けやすいですが、厚手のものを意識するとポリ袋の厚みが0.05~0.15mmといった製品が市販されています。
厚みがあると重量物でも破けない頼もしさはありますが、あまり厚すぎてもゴワゴワしてバッグが包みにくくなります。厚み0.10~0.15mmにもなると石ころを詰めても破れない強度を持ちますが、シートのような感触になってきます。
「ゲリラ豪雨のような酷い雨なら、やはり完全防水バッグのほうが良いのでは!?」と心配される方もいるかもしれませんが、それだと下記の訓練レポートような環境を想定する必要があり、防水する・しないの前にまともな避難行動が不可能になります。
また、完全防水仕様のバッグは構造がシンプルな形状が多く、使いにくさが目立ってくるよようになります(背負いにくい、ポケットの数が少ない、インナーバッグがないと整理しにくい等)。
部分的に撥水性能が高くても内部が濡れてしまう可能性あり!防水バッグやジップロックで個別に防水すれば防災グッズの水濡れや汚れを低予算&効果的に防ぐことができます。
両手が空くバッグパック(リュック)タイプが最適?
とっさの動きに対応できるよう、また高低差がある場所でも動きやすいように両手が空くバッグパック(リュック)が向いています。
夜間にライトを持つにしても同じ理由でランニングライト、ヘッドライト、クリップライトのような照明を身につけるタイプが使い勝手が良いです。
ただ、ちょっと走っただけでバッグパックが左右に強く振られてしまったり、ベルトや背中のクッション性の無いタイプだと荷物がゴツゴツあたって不快感やベルト等が食い込んで疲れやすくなります。
歩いた時に左右に振られ方がどうしても気になる場合はチェストベルトを着けておくと軽減されます(最初からついてるバックパックもあれば、後からベルトだけ追加する事もできます)。
バッグパックでなく、ショルダーバッグやボストンバッグみたいな形状しか手元になくても斜めがけ(たすき掛け)で両手は空きますが、中身が10~20kgもあるとバッグがやはり振られ気味になるので体勢を崩さないよう注意が必要です。
ここまでは大人一人ずつの話ですが、もし大人2人・子供2人という家族1グループとして動くような場合も考えると子供に重いバッグでは負荷が掛かりすぎるので、大人側がバッグ容量を稼ぎつつ移動時の負荷を軽減できるキャリーバッグに切り替えたり、重量物でも動かしやすいキャリーカートを追加して動く方が適している場合もあるでしょう。
家族と共に行動する場合は、それぞれの体力などを踏まえた持ち運び方を検討する必要アリ。実際に防災グッズを入れてみて小走りぐらいはできるのか確かめておきましょう。