製品の選び方

防災グッズの笛は本当に役立つか?実際の救助現場で笛が効果的だった事例と活用法を知ろう

笛の音によって実際の救助現場で役立った事例

自然災害によって退路が断たれて孤立無援になった場合や、遭難事故で思うように身動きがとれない場合、笛を活用できた事で救助へ繋がった3つの事例をご紹介。

1つ目は遭難事故で早期発見に繋がったもの。

男性は14日朝、群馬側の登山口から入山して道に迷い、右足を痛めた。体力消耗を避けるために移動を抑え、持っていた弁当とパン、沢の水でしのいだ。食糧が尽きたため、居場所を知らせようと笛を吹きながら尾根上の登山道を歩いていた20日午前7時45分ごろ、別の遭難事故で出動していた民間の救助隊に発見されたという。
笛吹いて居場所知らせる 山で遭難の男性、6日ぶり発見

2つ目は総務省消防庁の『第21回全国消防救助シンポジウム記録集』、この36ページ目にも掲載されている笛やライトを用いた救助事例。

総社市消防本部 水難救助の事例
総社市消防本部様からご提供いただいたのですが、川を流す木の中に2 人がいます。携帯ライトや笛を使ってその場所を知らせたとのことです。ちなみに先に救助された2 名は、橋の欄干から均等にたらされた消防ホースに捕まって救助されたと伺っています。
総務省消防庁 第21回全国消防救助シンポジウム記録集(※PDF)

3つ目は自然災害。記憶にも新しい西日本豪雨で住民間での救助活動に笛やライトで居場所を伝達した事例です。

水上バイクで来たヒーロー 15時間かけ120人救う
日が暮れると、住民はライトを振ったり笛を鳴らしたりして存在を知らせていた。夜中には水深が浅くなり、水上バイクの底が何かにぶつかって何度も転倒したが、起き上がって救助を続け、午前4時までに計120人ほどを運んだ。
朝日新聞デジタル 西日本豪雨 岡山県倉敷市真備町での報道

このように実際の救助現場でも笛の音が救助隊の気づきにも役立っており、笛自体も軽量で安価なため普段から持ち歩く防災グッズとして、ぜひ取り入れておきましょう

笛を利用するメリットとして、声を出すよりも疲れにくく長く助けを求められるという部分もありますが、災害時の混乱・騒動下でも居場所を伝えやすいという事もあります。一般的なスピーカーや人の声は風雨が強くなっただけで聞こえにくくなります。

また笛という防災グッズの性質上、当然ながら、すぐに取り出せないとその効果を得られません。救命胴衣に笛がくくりつけられているように、財布やスマートフォンのストラップにつけたり、笛自体を複数個用意しておくのも良いでしょう

笛を選ぶ時に実用性の低そうな笛にはご注意!

デザインに凝ったファッション性が重視されてそうな笛にはご注意ください。

筆者は真鍮製で作られた筒状のタイプをキーホルダーとしてつけていた時期があったのですが、実際に吹いてみると大きな音を出すには想像以上に吹き込まないとダメだったり、経年劣化でサビついて音が響かなくなっていました

上記の製品例ではスポーツの審判などが使うごくごく標準的な笛のほうが楽に大きな音を出せたので、『実用性が軽視されていそう』という製品は避けましょう。

アウトドア用品店で見かける登山用やマリンスポーツ用品から選ぶとハズレな製品は少なくて済むかと思います。具体的にはストームホイッスル(※米国の公式サイトはこちら)であれば省力で大きな音もだせて、水濡れにも強い特長を持ちます。

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防災向けに作られた国内製品としては文具メーカー大手のコクヨからツインウェーブという製品名でリリースされています。ストームホイッスルよりも厚みが少し薄めでコンパクトなのと、キャップが付いているのでスマートフォンや財布、キーホルダーなどにつけても吹き口が汚れにくくできる工夫がなされています。

近年はスマートフォンが誰もが持ち、災害時の連絡・情報収集・避難生活の支援などにも大きな役割を果たしていますが、災害直後の利用はスマートフォン自体が破損していないか、電波は通じるか…など、災害時のダメージが比較的少ない状況が前提になりやすいため、非常時の連絡手段を複数持つという意味でも笛を常備しておきましょう。

防災用に笛を使うなら「吹き方」も知っておこう

助けを呼ぶ場合、実は規定の「吹き方」があります。いわゆる遭難信号です。

詳しくは日本勤労者山岳連盟のページを参考頂きたいですが、1分間は10秒ごとにピーッと長音を吹き、次の1分は休憩(笛を吹かない)、次の1分で再び10秒ごとに吹く…、という繰り返しが野外での救助要請となります。

この信号は笛の音でなくても、ライトのような光でONとOFFで発しても同様の信号として取り扱われています。

逆にこの笛の吹き方を繰り返し聞いた場合は、誰かが救助を訴えている場合がありますので、災害時の迅速な互助活動へと繋げられると良いですね。

笛でなければならない!という先入観はなくそう

救助を求める際、笛は確かに代表的な防災グッズの一つではありますが、避難する際に持ってくるのを忘れたり、落として紛失したり、いざ使おうと思ったら壊れていた…という事はあり得る話です。

なので、笛が手元から離れてしまったからといって居場所を知らせる方法を諦めるのではなく、「ほかにどんな方法があるか?」を思案しておきましょう。

  • ライトを点滅させる
  • 空き缶や金属板を叩いたり振ったりして音を出す
  • 目立つ布切れを大きく振る
  • 偵察に訪れた航空機が判別できるサイズの文字を地上に書く
  • 危険のない範囲で焚き火などで知らせる
  • 鏡や反射板になるもので太陽光を乱反射させる

自転車用のライトでも、ライトを点滅させるモードがよく付いているので満充電ならば丸1日ぐらいは点滅させることができると思います。

もし、より本格的な機材で備えたい場合は、工事用の保安灯や、車両用のLED非常信号灯のような製品が適しているかもしれません(360度の全方位・100m以上の視認距離・丸一日程度のバッテリー耐久などの要件を満たすものを探すとすれば)。

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