巨大地震の予兆を知ることができる情報源とは?
気象庁が南海トラフ巨大地震の予兆を確認できた場合、市民に警戒度を高めるよう促す「南海トラフ地震に関連する情報」や「南海トラフ地震臨時情報」というものが存在することを皆さんご存知でしたか?
現状、南海トラフ巨大地震で大きな被害が懸念される静岡県でも認知度はまだ15%です。
半数弱が事前避難「しない」南海トラフ臨時情報、認知度15%
静岡県は5日、2019年度の「南海トラフ地震についての県民意識調査」の結果を発表した。19年5月に運用を始めた巨大地震発生の可能性が高まった際に注意を促す南海トラフ地震臨時情報の認知度について「知っている」と答えた人は約15%にとどまり、発令に伴う1週間の事前避難を半数近くが「しない」と回答した。
静岡新聞アットエス 2020年3月6日付け
一般的に地震といえば何の予兆もなく、ひとたび大きな揺れに遭えば為す術もなく被害が出てしまうイメージが強いです。下記動画はANNがYouTubeにて配信されている東日本大震災の仙台空港のカメラが捉えた映像(※津波映像あり)です。
南海トラフ地震については、科学技術の発展もあり気象庁がプレート(※ここでは分かりやすいように以後「岩盤」で統一します)での変化を24時間体制で監視、平時にはない異常な現象を検知すれば一般市民にその情報をアナウンスすることになっています。
~南海トラフ巨大地震の予兆~
気象庁が科学的見地より『臨時情報』を発表する
この気象庁が行うアナウンスをまとめて「南海トラフ地震に関連する情報」と呼ばれ、実際に南海トラフ巨大地震に繋がりかねない動きが見られた場合は「南海トラフ地震臨時情報」が発表されます。
詳しい事はひとまずおいといて、、、気象庁の公式サイトや該当ページなどブックマークしたり、SNSアカウントをフォローしておきましょう。
南海トラフ巨大地震と人的被害予測について
復習として南海トラフ巨大地震に関してサラっと下記にまとめておきます。
- 100~150年の周期で繰り返し発生している地震
- 今後、30年以内に7~8割の確率で発生するとされる
- 周期的にはいつ起きてもおかしくないという状態
被害想定は内閣府の『南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)のポイント ~施設等の被害及び経済的な被害~(※PDF)』と『南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第二次報告)及び 被害想定(第一次報告)について(※PDF)』から主に人的被害にあたる部分を抜粋すると、
- 避難者は断水の影響も含めて1週間後に950万人発生
- 避難所へは同じく1週間後に500万人の避難者
- 帰宅困難者は平日12時の被災で1000万人以上
- エレベーター閉じ込め事故は最大23,000人発生
- 死者数は32,000~323,000人と条件により大きな差がでる
となっています。特に死者数で大きな幅がでるのは地震の発生場所、家屋の耐震化率の進捗、津波避難ビルの活用がうまく行った場合とそうでない場合、季節などにもよってもシミュレーションする際の条件によって最大10倍近い差が出ていました。
巨大地震の「予兆」の確認には条件がある
岩盤全域が破壊されずに済んでいる事
岩盤がいきなり広範囲に破壊されて巨大地震を引き起こす「全割れ」となった場合は、当然ながら予兆のない巨大地震が発生します。南海トラフ巨大地震の予兆として発表するには、岩盤が全割れしない段階で小規模地震や岩盤に何らかの異常な動きを得る必要があります。
予知・予兆を発表する事ができる3つのパターン
気象庁の『南海トラフ地震に関連する情報について(※PDF)』でどういった場合で臨時情報が発表されるか詳しく記載がありますが、ざっくり書けば、
- 岩盤で異常な動きを察知した場合
- 岩盤の部分に割れてM7.0~7.9の前震が発生した場合
- 南海トラフの巨大な岩盤のうち半分程度割れてM8の地震が発生した場合
この3つのパターンです。最悪なのはもちろん予兆なしで南海トラフ巨大地震が突発的に発生してしまう事です(岩盤の全割れ)。
また、「南海トラフ巨大地震発生時は必ず臨時情報によって予知されて、事前に行動できるようになった!」とは捉えないようお願いします。
予兆が確認できた場合「臨時情報」が発表される
前述の3つのパターンが確認された場合、最短で2時間後には国より以下の何れかが発表されます。調査が長引く場合は調査中と複数回発表されることもあります。
- 南海トラフ地震臨時情報(調査中)
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)
- 南海トラフ地震臨時情報(調査終了)
もちろん「調査終了」と発表されても、気象庁が南海トラフ巨大地震の動きのすべて読み切れる事はないので、繰り返しとなりますが、「これで巨大地震の心配はなくなって一安心…」と誤解なきようお願いします。
臨時情報が発表されたらどう動けば良いのか?
臨時情報が発表されれば各自治体も防災行動へと移行しますが、『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)』が発表された場合には、
1~2週間の事前避難
という後発の巨大地震に備えるというハードルが高い取り組みをこなす必要がでます。
事前避難対象地域に指定されている方、自宅が未耐震の方、自力で避難が難しい方、津波からの避難が難しい方などが該当してきます。
「いやいや事前避難って・・・、大量の市民を1~2週間も避難生活させる事が可能な施設なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、大きな被害が懸念されている高知県や静岡県の対応モデルを参考にすると他の自治体も以下のような方針になると思われます。
- 避難先は知人宅、親類宅、ホテル、旅館、車中泊、テント泊が候補
- 避難先は指定の避難所も開設されるが基本的に自助で対応
- 食料なども基本的には自助で対応
- 地震に備えつつ通常の社会活動を維持
都道府県ごとに被害想定、必要な施設・資材の準備状況などが異なるため避難行動の指針は少しずつ変わります。詳しくはお住まい自治体の公式サイトでチェックをお願いします。
この『1~2週間の事前避難』は一個人として単独で動く分にはまだ理解しやすいですが、『社会活動を維持する』という観点では非常に対応が難しい問題です。
- そもそも勤め先は臨時情報のこと把握しているのかな?
- 交通機関は1~2週間、平時と同じように運転するの?
- 医療従事者、市役所、消防士や警官の方々はどうなる?
- 入院患者はどうする?新型コロナ感染症対策は?
- 在宅医療を受けていたり、要介護者はどう受け入れを?
- パニックで買い占めが心配。1週間の備蓄はどうすれば?
- 学校は休校?教室や体育館は市民の避難所になるの?
など、課題が山積みになっています。
冒頭の静岡県での調査も踏まえても、お勤め先の事業所様も同様に南海トラフ巨大地震の予知・予兆にあたる臨時情報を把握されている方は少ないと思います。
ぜひ今みているこのページと共に、内閣府がYouTubeで配信している次の2つの動画をご参照いただき、南海トラフ巨大地震の予兆(臨時情報)に対する自社への影響や対応策についてはじめてみましょう。
また、勤め先だけでなく1週間の事前避難は自助が基本となるため、備蓄はもちろんのこと、自宅が「事前避難対象地域」になっていないか、お住まいの地域の被害想定はどれくらいかハザードマップとともに確認して避難先の確保・避難手順の確立を急ぎましょう。