防災・減災ガイド

南海トラフ地震の津波が最短2分で到達!有効な津波対策としてどんな備えができるのか?

南海トラフ地震による津波の到達時間

下記の表は内閣府 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ『都府県別市町村別津波到達時間一覧表(※PDF)』のデータより都道府県別に最短到達時間順で当サイトが下記の通り一覧表を作成しました。

特に静岡県、和歌山県、三重県、高知県、徳島県は津波の到達時間が10分以下と極めて短時間と予測されており、揺れが収まったらすぐ高い場所にいる事が前提のようなレベルを要求される地域が多数あります。

また、この表は1mの津波が到達するまでの時間であって最大津波高はさらに高くなる地域も多数あります。例えば静岡県の下田市であれば1mの津波は13分後に到達予想で、さらに4分経過した17分後には津波の高さが20mにも達します。

このように現在の科学で判明している最大級の南海トラフ地震発生時では、津波の到達速度や津波高、被害の広さ、いずれも近年のどの災害をも上回る被害が想定されています。

1mの津波でも致死率は100%という調査結果

前述の表は「津波1m到達時間」を都道府県別にリストアップしました。
「私たちにとって1mの津波到達は脅威なのか?」という疑問については次のデータを参考にしてください。

内閣府の防災情報資料『南海トラフの巨大地震 建物被害・人的被害の被害想定項目及び手法の概要(※PDF)』によれば津波の浸水深30cmで死者が出始め、1mでは計算上、ほぼすべてが死亡するとの事でした。なので、津波が1mが到着した時点ではすでに高台へ避難済みでなければなりません。


上記は釜石市役所付近に押し寄せる津波 【視聴者提供映像】

東日本大震災は2011年14時46分に発生し、その津波の到達時刻は岩手県大船渡市へは15時18分に到達、宮城県石巻市は15時26分、福島県いわき市は15時39分でした。

東日本大震災での犠牲者の9割ほどが津波によるもので、到達時間に30分ほどの猶予で14,000名が亡くなられています

そして、30分どころか10分以下で津波が到達しかねない南海トラフ地震が、いかに危険度の高いかがわかる被害予測だと言えるでしょう。

津波到達の想定時間が避難に使えるのか?

津波の想定到達時間が仮に1時間という地域に住んでいるとします。この1時間を避難時間に割り当てることができるかどうかは、お住まいの地域によっても大きく異なります。

あまりクローズアップされていませんが、阪神淡路大震災では淀川下流で約2kmにもわたって堤防が大きく損壊しました(近畿地方整備局 淀川河川事務所)。

当時、大阪の震度は4ほどでしたが(気象庁 阪神・淡路大震災から20年)、地盤の液状化により堤防が最大3mも沈下するほどダメージを受けて周辺地域では浸水リスクが高まり、10日間かけて緊急盛り土工事により応急措置がなされました。

もし、浸水被害を受けやすい海抜ゼロメートル地帯で地震による堤防損壊が発生すれば、津波が来る前に浸水被害を受けてしまいます。津波がすぐに到達しない地域であったとしても、浸水した街では避難が困難となります。

ハザードマップで津波のリスクを確認する際には、避難時に他の災害が大きく影響してこないか組み合わせて判断することが重要です。

南海トラフ地震に有効な津波対策はあるのか?

現状、津波から逃れる事ができる避難場所としては以下のような対策があります。

  • 避難避難タワー(鋼鉄製で作られた強固な塔)
  • 津波避難ビル(既存のビルへの避難)
  • 津波避難路(高台へすぐ登れるように階段やスロープ設置)
  • 築山・津波避難マウント(人工的に作られた高台の造成)
  • 津波シェルター(浮体式津波避難シェルター等)

津波避難タワーで国内最大級のものでは7階建て、高さ25mに達するものもあります。

津波避難タワーや津波避難ビルは東日本大震災以後、急ピッチで設置が進められました。しかし、どちらも自宅を津波タワーみたいな作りに変更したりはできませんので、こういった対策は個人の津波対策としては見なせません。

となると、津波避難ビルや津波避難タワーまで距離があると「自宅から避難してそもそも間に合うのか?」と感じる方もおられると思います。

津波到達までに近くの高台へ避難できるかどうか?」この疑問について、具体的な基準の1つとして総務省消防庁『市町村における津波避難計画策定指針(※PDF)』の資料が参考になります。

・避難時の歩行速度は0.5~1.0m/秒
・東日本大震災時の津波避難実態調査結果による平均避難速度は0.62m/秒
・避難速度は夜間の場合は昼間の80%に低下
・避難できる限界の距離は最長でも500m程度
・地域の実情に応じて、地震発生後2~5分後に避難開始

【避難可能距離の計算】
避難可能距離=(歩行速度)×(津波到達時間-避難開始時間)
毎分60m×(津波到達まで10分-避難準備に2分)=480m
よって上記なら約500mが避難可能距離の目安となる
総務省消防庁『市町村における津波避難計画策定指針(※PDF)

揺れが長く続いた場合など細かな特記事項も記載されているので是非PDFファイルも確認して頂きたいですが、上記の基準に当てはめてみると自身が近くの高台(津波タワーや津波避難ビル等)に計画通り避難できそうかイメージしやすくなると思います。

避難可能距離はゼロ、避難困難な地域はどう対策?

総務省消防庁の基準でいけば、静岡県、和歌山県、三重県、高知県は津波到達時間が2~5分、避難準備にも2~5分と考えると差し引きゼロとなってしまい、避難可能距離がゼロメートルという計算結果になる方がたくさん出てきてしまいます。

津波到達時間が短い地域では津波避難タワーや津波シェルターの設置も増えてきましたが、運用の問題点もあります。対策も含めて詳細は下記ページもご参照ください。

津波シェルターや津波避難タワーの問題点とは?津波到達時間が短すぎる地域の対策について 津波の避難が間に合わない地域の津波対策 下記ページでも触れていますが、南海トラフ地震の津波到達時間が極めて短いことが被害想定で明...

津波からの避難が難しい地域での根本的な解決策としては、内閣府の防災情報『和歌山県の地震・津波対策について(※PDF)』にて下記のように記されています。

南海トラフ巨大地震の津波避難困難地域解消のための高台移転
・南海トラフ巨大地震(M9.1)では、より高い津波が極めて短時間で到達するため、
堤防などの対策を講じても津波避難困難地域は解消しない
・津波から命を守るためには、住宅の高台移転などの地域改造をはじめとしたさらなる対策が必要

堤防で津波が到達するまでの時間を稼ぐなどの対策も検討されていますが、住民の住処を高台へと移転するくらいの事をしないと回避はできないだろうとされています(※現実的な津波対策として)。