ローリングストックとは
ローリングストック自体に関しては、日本気象協会の「トクする!防災」や農林水産省のリンクページにて民間企業が取り組み方について解説があります。ざっとまとめると、
といった感じに、備蓄した非常食の賞味期限が切れてしまう前に新たに補充されることで、賞味期限が常に更新される仕組みです。ローリングストックという名称がついてますが、早い話、賞味期限が近づいたものから食べる&リピート買いしているだけです。
- レトルトカレーを12個買ってキッチン周辺へ収納
- 1ヶ月に1度はレトルトカレーを食べて在庫は11個へ減少
- スーパーへ立ち寄った時にレトルトカレーを1つ購入
- レトルトカレーの在庫が12個に戻る
災害時には12個すべてが非常食としても使えるほか、1ヶ月ごとに買い直している事になっているので賞味期限が切れない状態をキープできる。
上記レトルトカレーの例のように、自宅にある在庫を一定量切らさないように消費と補充を繰り返すことで非常食のような賞味期限を持たない食材であっても、非常食のように取り扱うことができます。
ちなみにレトルトカレーの場合は防災専用に設計された商品でなくとも、製造後1~2年程度の賞味期限をもっています。賞味期限が1年(12ヶ月)あるという事は、毎月12分割した量を消費すれば賞味期限が切れないという事になります。
ローリングストックのメリットとデメリット
ローリングストックのメリット
防災専用の非常食や保存水を買い込まずに済む
賞味期限5~10年という長期保存性を確保できるように開発された非常食は高価となりがちです。乾パンのようなシンプルな非常食はともかく、「災害時でも美味しい食事がとれるように」と商品開発されたものは1食あたりのコストはどうしても高コストです。
具体的なところでいくと、ホリカフーズの牛丼は災害時でも調理ができる発熱剤もセットで1食あたり1,000~1,500円になります。これくらいのクオリティを大人3名で3食を食べたとすると1日あたり非常食だけで9,000~13,500円の予算が必要です。
予算がある場合は災害時でもすぐ温かい食事がとれて被災で落ち込んだメンタルを支えてくれる一品になりますが、下記の通り大災害向けに1週間の備蓄想定となれば実に6~9.5万円。初期費用としては結構な額になってしまいます。
災害支援物資が3日以上到着しないことや、物流機能の停止によって、1週間はスーパーマーケットやコンビニなどで食品が手に入らないことが想定されます。このため、最低3日分~1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましいといわれています。自治体が作成するハザードマップなどを確認し、お住まいの地域の状況に応じて2週間分など多めに備えることも大切です。
農林水産省 災害時に備えて食品の家庭備蓄を始めよう(※PDF)
一方、ローリングストックであればスーパーで市販されている日常的な食品を採用するため1食あたりのコストが削減しやすくなります。
日常の食事と置き換えながら非常食としての備蓄も並行して進むので、非常食を大量に買い込む事必要がありません。
収納スペースを節約できる
手元に賞味期限が5年の非常食が沢山あったとしたら、長期保存できる特性を活かすために納戸や倉庫っぽい場所へ収納する事が多いと思います。
防災専用に非常食と保存水を大量に買い込むと納戸や倉庫にダンボールが積まれる事になり、収納スペースをただ長期間占領するだけになってしまいます。
一方、日常的に使いやすい食品や飲料であれば、キッチンからも遠く、取り出しにくい納戸や倉庫には入れずに食器棚やキッチン周辺の収納スペースが候補になるはずです。
キッチン周りの収納スペースだけで、7日分すべてを収納してローリングストックで回すのは無理でも一部を有効活用できる事で、収納スペースを節約することができます。
ローリングストックのデメリット
賞味期限が長めの食材を食べる習慣がないと難しい
例えばレトルトカレーを全く食べないご家庭が、ローリングストック用の食糧としてレトルトカレーを採用しても消費や補充を忘れがちになってしまいます。
第三者から見ると「いやいや1~2ヶ月に1度は食べるでしょー」と思えても、個人の嗜好が問題になっているので、食べる習慣がない限りは消費と補充が途切れてしまい、ローリングストックが上手く行かなくなります。
とはいえ、非常食のように5年みたいな長期間でなくとも、賞味期限が長めな食材は日常食品として候補はたくさんあります。
- フリーズドライ製品
- 乾燥食品
- パスタ、麺類
- レトルト食品
- 缶詰
- パックご飯
- 菓子類
- ふりかけ、ジャム
- 香辛料、調味料
賞味期限は1年程度あればローリングストックの候補に入れやすいでしょう。
缶詰やレトルト食品をあまり食べない方でも、乾燥食品やフリーズドライ製品なら風味が好みだという方もおられるのではないでしょうか。
個別包装の切り餅(「サトウの切り餅」とか)は1kg分を買ってもスーパーで500~700円で入手できる上、賞味期限は製造から2年にも達します。切り餅のカロリーは2つ食べればご飯一杯と同等ですので、災害時の空腹には頼りになります。
大きめのスーパーへ行ってみると、まだまだ賞味期限が長めのものは発見できると思いますので、気になる商品を見かけたらチェックしてみましょう。
在庫管理が手間になる場合がある
ローリングストックの対象とする食材を増やしていくと、今度は在庫管理が手間になる場合が出てきます。
仮に、10種類の食材をローリングストック用の食糧とした場合、賞味期限が迫ってくるにつれてまるでお手玉してるかのように消費と補充に追われることになります。賞味期限が6ヶ月のもの、3ヶ月のもの、といった短めの商品を取り入れた場合も同様です。
対策としては以下のようなポイントを押さえるとローリングストックのメンテナンス性が高まると思います。
ふりかけは災害時におかずを用意できなくても味を飽きさせないような工夫ができますが、1袋モノだと開封すると賞味期限の問題がでてくるため、開封後はある程度のペースで食べる必要がでてきます。
ふりかけを日常的に食べている方は良いですが、食べない方は連食がきつく感じると思いますので、個人の好みによって個別包装品にしておくのも保存できる期間を伸ばすポイントとなります。
ローリングストックを習慣化するポイント
必ずしも1日3食の備蓄量で計算しなくても大丈夫
まず、1食分の食糧を以下のようにリストアップしたとします。
- オニギリ 3個
- 汁物 1個
- おかず 2個
これを大人3名、1日3食、7日間分を備蓄しようとなると・・・
- オニギリ 189個
- 汁物 63個
- おかず 126個
なんと、オニギリだけでアルファ米で有名な「尾西のごはん」のダンボール4箱ぐらい用意する必要が出てきます。ここへさらに飲料水やおかず、調理器具なども含めるとちょっとした防災倉庫が必要になるでしょう。
人間は水を一滴も飲めなかったとしたら数日間で生命の危機に陥りますが、食糧が不足して仮に絶食状態となっても、自身の脂肪分などからエネルギーへと変換できるので「すぐ食べないと餓死する!」という状態には陥りにくいです。
食糧不足になれば空腹感のストレスや活動量の低下につながるのは事実としてありますが、普段よりも食事量が多少減ったからといって即行動不能には至りにくいので、平常時のメニューを想定した完璧な準備は現実問題として難しいでしょう。
参考までに農林水産省の下記ガイドでも緊急時の対応として1日1人あたり1,500kcalを一つの目安と設定されていました。
本ガイドでのエネルギー補給の考え方
本ガイドでは、緊急時であるため、必要エネルギー量は1日1人あたり1,500kcal程度とし、炭水化物とたんぱく質を主に摂取することとしています
農林水産省 緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド(※PDF)
避難生活時における栄養管理も対策すべきテーマです。そこへステップアップする前にローリングストックによる食糧や飲料水の備蓄量強化からはじめていきましょう。