チェックリスト

防災グッズのチェックリストを見直して自助力を高めていくには?

防災グッズの一覧イメージ。防災グッズのセット品の購入だけでなく、チェックリストを活用して自身・家族のライフスタイルにピッタリの備えを心がけましょう

従来までの防災グッズチェックリストでは漏れも多い

下記は2017年5月頃に確認した総務省消防庁のWebサイトに掲載されている防災グッズチェックリストです。

http://www.fdma.go.jp/html/life/sack.html
印かん、現金、救急箱、貯金通帳、懐中電灯、ライター、缶切り、ロウソク、ナイフ、衣類、手袋、ほ乳びん、インスタントラーメン、毛布、ラジオ、食品、ヘルメット、防災ずきん、電池、水

既に「あれ、何か足りない気がする…」と感じた方もおられるかもしれませんが、上記はよく知られている防災グッズしかリストアップされておりませんので、人によっては他にも重要度の高い製品がリストから漏れている事があります

備える際の参考として用いるにしても、近年発生した災害の教訓を取り入れたリストも併せて参考としていきたいところです。

防災グッズのチェックリストは災害への備えとして基本的な確認シートではありますが、「お買い物リスト」のように使うだけでなく、どのような要因によってどんな防災グッズが必要になるか?を意識していくと、より実用的な備えになっていきます

立地や建物など様々な要因で備えるべき内容が変化する

例えば「活動している土地に詳しくない」と心配する方であれば、スマートフォンの地図アプリを多用してるかもしれませんので予備のモバイルバッテリーや、バッテリーを温存してネットに接続しなくても帰り道や迂回路を把握できる地図や印刷物をカバン入れて持ち歩けば心強いでしょう。

「体力が自信がない」という方も、日頃のよく通るルートを再確認して休憩できるようなポイントや、災害時の支援が受けられる施設などを重点的に調べておくというのも一つの対策になると思います。また、市役所で無料配布されているハザードマップを入手しておけば代表的な施設の案内が掲載されているはずです。

自分自身持病がある、ケガをしている、体力に自信がない、活動している土地に詳しくない、など。
家族構成一人暮らし、介護が必要な家族がいる、小さな子供がいる、男性が多い、女性が多い、ペットを飼育している、など。
住まい戸建て、マンションやアパート、耐震性の高い建物か、建物の老朽化が進んでいないか、普段は何階で生活しているか、など。
生活習慣通勤通学の手段や時間帯、帰宅時の時間帯、日中の行動、休暇時の行動、日頃の行動範囲、よく利用する移動手段や商業施設、など。
立地や地形都市部・沿岸部・山間部などどれに分類される地域か、避難所までの距離、地盤が軟弱でないか、気候の移り変わりは激しいか、海抜はどれくらいか、など。
その他原子力発電所を中心に半径30km圏内(UPZ:緊急時防護措置を準備する区域)に該当するエリアに住まいや職場がある。

持ち出し袋にチェックリスト分を詰め込むと重すぎる

市販の持ち出し袋や、冒頭にあった総務省消防庁のリストなどの防災グッズを詰め込んでいくと重量は軽くて5kgほど、重ければ15kgを超えてきます。

特に水は軽量化したりする事ができず重要度が高い割に重いため、持ち出し袋がかえって迅速な避難行動を妨げてしまうリスクが出てきます。沢山ペットボトル抱えて動きが鈍ってしまっては何のための備えかわからなくなります。

このため近年では複数の持ち出し袋を準備しておき、避難時向けにコンパクトな一次持ち出し品、落ち着いて行動できる段階になってから避難生活用の二次持ち出し品を持ち出す方法が取り入れられるようになりました。

しかし、東日本大震災で津波被害がクローズアップされたように、一刻も早い避難が必要な場合では一次持ち出し品すら気にしているヒマがないケースもあります

東日本大震災の震災ビッグデータでは、「避難できたのに自宅へ荷物を取りに戻ったため津波被害に遭った」という事が明らかになったとして、東北大学 災害科学国際研究所(IRIDeS)でも避難できたら家へ戻らないように家族内で周知されておくべきだと報告、持ち出し品の取り出しには、津波や余震動向などを把握して安全が確保されてから対応するなど慎重な判断が重要になります(なお、東日本大震災が発生して津波警報が解除されるまでの時間は2日ほど掛かりました)。

南海トラフや首都直下地震等では公的支援が遅れる

東日本大震災では津波や原発への被害、熊本地震では観測史上初の震度7もの地震が連続して起きるなど「想定外」というキーワードをよく見かけるようになったように、内閣府の防災白書でも公助の限界について述べられ、市民1人1人の災害に対する備え、自助・共助について一層の強化が求められています。

防災白書「公助の限界」と自助・共助による「ソフトパワー」の重要性
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h26/honbun/0b_5s_01_00.html
東日本大震災等の大規模広域災害の発災時には、行政が全ての被災者を迅速に支援することが難しいこと、行政自身が被災して機能が麻痺するような場合があることが明確になった(「公助の限界」)。

南海トラフや首都直下地震のような場合、一度に発生する被災者があまりに多すぎたり、複数の県にわたって甚大な被害を受けてしまう事で今まで以上に迅速が支援が困難になると予想されます。

また都市部だけの問題でなく、連絡手段が乏しくアクセスできる道路も少ない集落では道路が寸断されたために被害状況が外部へ全く伝わらず、孤立している事さえ気づかれない状況が出てきます。

東日本大震災で孤立した岩手県大槌町・赤浜地区で避難した住民145名の事例では、食糧・飲料水がほとんど無い状況をアマチュア無線経由により伝えられ800km離れた大阪府からの緊急消防援助隊などにより救援活動へと繋がりました(道路が寸断され、防災無線も使用不可能な状態)。

備蓄は3日から1週間以上への積み増しへ

持ち出し袋以外の備えとして、住まいへ非常用の飲料水などの備蓄品があげられますが、特に大きな被害が予測されている南海トラフ巨大地震では市民が「家庭備蓄を1週間分以上確保」し、長期化する避難生活への対応力をつけるよう、行政側が呼びかけています

内閣府 中央防災会議 防災対策推進検討会議
南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの最終報告書
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/
被災地域では、発災直後は特に行政からの支援の手が行き届かないことから、まず地域で自活するという備えが必要であり、食料や飲料水、乾電池、携帯電話の電池充電器、カセットコンロ、簡易トイレ等の家庭備蓄を1週間分以上確保するなどの細かい具体的な対応を推進する必要がある。

一般的な防災グッズのセット品の場合では、様々な種類の防災グッズが詰め込まれているものの、長期化した場合の備えとしては質・量ともに不足している事も多いため、各家庭で必要に応じて備蓄量を高めておきましょう。