防災グッズ収納時に共通する注意したいポイント
部屋の高い位置に重い物を置かない
下記の動画は国立研究開発法人 防災科学技術研究所が東海・東南海地震で予測される地震をE-Defense(実大三次元震動破壊実験施設)によって人工的に発生させ、実物の住居がどんな被害を受けるか実験した映像『長周期地震動に関する震動台実験 リビング編』です。
この動画を見てもわかるように、固定されていない家具や背の高い家具は転倒が相次ぎます。もし、カセットコンロなどを普段使わないからといって食器棚の上においていたりすれば、防災どころか自ら危険な要素を増やすだけになってしまいます。
不要な家具を処分したり、転倒防止グッズを活用したり、転倒リスクの低いローボードに収納すると効果が大きいでしょう。
一箇所へまとめて収納しない
防災グッズの置き場所といっても、工具やコンロのようなすぐに取り出さなくても良いものもあれば、常に身につけておいたりすぐ持ち出したいものもあります。
それぞれ優先度が違いますから1つにまとめて収納してしまうと、すぐに取り出せなくなったり、自宅の損傷でせっかくの備蓄が利用できなくなったりします。例えば下記のように台風による浸水で倉庫に備蓄していた防災用品が水損しました。
仙台市宮城野区の市有倉庫が台風19号で浸水し、災害用の備蓄食料が一部使えなくなった (中略) 直接床置きせずに棚に上げたり、雨水の流入防止板を設置したりするなどの対策はなかった。台風19号では倉庫が30~50センチ浸水。段ボール約600箱が水浸しになり、約2万食が使用不能になった。
備蓄拠点、そこは浸水想定域 仙台市「認識していたが…」対策なく2万食無駄に
ハザードマップで自宅が浸水被害を受けやすいエリアでないか確認して、もし該当していたなら2階・3階など高い階層へと移動させておきましょう。
そもそも階層がない平屋建てやマンションの1階だった場合で、浸水時に自宅が水没しかねないレベルでしたら防災グッズの収納が問題ではなく自宅が水没する事が問題です。引っ越しや高階層への検討や、リスクが高まる台風シーズン等はいち早い避難行動が重要になってくるでしょう。
1階は全部ダメ!という訳では決してなく、ハザードマップなど客観的なデータを基にお住まいの住居の危険度を評価します。
収納と整理整頓をセットで進める
防災グッズは使う頻度が低いため、充実させていくほど備蓄品や家財が増えていきます。ペットボトルのお水やお茶といった飲料水を1ケース買うだけでもダンボール1つ増える事になります。
また、東日本大震災クラスの大災害を想定する場合、あまりに被害が大きいために市民側で1週間分以上の備蓄が推奨されています。
被災地域では、発災直後は特に行政からの支援の手が行き届かないことから、まず地域で自活するという備えが必要であり、食料や飲料水、乾電池、携帯電話の電池充電器、カセットコンロ、簡易トイレ等の家庭備蓄を1週間分以上確保するなどの細かい具体的な対応を推進する必要がある
内閣府防災 南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)(※PDF)
支援がほとんどなくても、食料や飲料だけでなく1週間分の生活を支えるだけの物資となれば、収納場所もなくなってきたり、自然と家具の密度が高まりがちです。
前述の防災科学技術研究所検証動画にもあったように、家具の密度が高いほど地震のような災害時に大きな被害へ繋がりやすくなりますし、転倒防止グッズを使うとしても全ての家具を完璧に…というのも難しいでしょう。
家具の密度を低下させておけば、屋内の移動もしやすくなるため災害時の避難行動もスムーズになりますので、備蓄の強化とともに整理整頓をセットで進めていきましょう。
避難行動が取りやすいように収納する
部屋の整理整頓を進めると自ずと解決しやすい問題ですが、収納場所がないからといって避難行動が取りにくくなるような収納には気をつけましょう。
- 寝室から玄関までスムーズに移動できますか?
- 廊下や階段が荷物で狭くなっていませんか?
- 持ち出し袋が取り出しやすいようになってますか?
- 玄関以外からの避難が可能になってますか?
特に注意したいのはドア付近の家具で、地震でドア枠が歪んだり、家具がズレたりしてドアの開け締めに支障が出るようなケースです。
実際の被害として雑居ビルの火災事故があげられます。
下記動画は2009年に発生した雑居ビル火災を受け、消防庁による一斉検査がなされたものですが、火災による被害拡大が「非常口に物が置かれていて逃げ遅れた可能性」についてTOKYO MXが報じたものです。
この火災について東京消防庁の調査では、
出火した飲食店では、通常使用する店舗出入口以外の出入口は、客の管理上の理由
等から施錠や物件存置されていたと推定され、非常時の使用が困難となっていた。
東京消防庁 高円寺南雑居ビル火災を踏まえた防火安全対策に(※PDF)
このように家具の密度が高いほど地震の揺れで助かったとしても、火災の発生、家具の転倒・ズレ・散乱、避難行動の遅れなどの二次被害に繋がりやすくなります。
避難行動がとりやすさも考えて、お部屋のレイアウト・収納場所を調整しましょう。
防災グッズの取り出し優先度を検討する
まず災害から生き延びるためが最優先となりますので、キャンプ用品のような「被災後の生活」で役立つ防災グッズは屋外の収納ボックスや倉庫へ移動させておくことで屋内の収納スペースを節約することができます。
自動車の中へ保管するのも手ですが、夏場・冬場の温度変化が極端に高いのでガスや燃料はもちろん、高温・低温・温度変化に弱い製品を保管しないようにしましょう。
屋外収納の場合、パっと見は水が浸水しなそうに見えても完全防水になるような高い気密性を持つ製品はあまりありません。
洪水・豪雨災害等に遭って水没してしまったり、ふだんの雨で湿気を吸ってしまう事を踏まえ、防湿対策・水損対策としてパッキングしておきましょう。袋に入るような小物ならジップロックへ入れておくと素材も丈夫で高い気密性が得られます。
生き延びるための防災グッズの一例としては、
- 頭部を守るためのヘルメット
- 手を守る手袋
- 足を守る踏み抜き防止スリッパ
- 視界を確保するライト
- 救助を求める笛
- 応急処置ができる救急セット
- 閉じ込めからの脱出や救助に利用できる工具類
- 津波や洪水対策にライフジャケット(救命胴衣)
などがあげられると思います。
これらは収納するとしても防災グッズとしての取り出し優先度が高いため、玄関周辺や寝室といった生活空間から手に取りやすい場所が適しています。