製品の選び方

感染症対策で不足する消毒液確保にオゾン水生成器『Water Magician』がまもなく登場

オゾン水での殺菌・消毒が身近になりそう!

お部屋や車両の脱臭機などで馴染みのある「オゾン」による機能性ですが、新型コロナで騒がれるまではオゾン水のほうは業務用として活躍が大きかったと思います。例えば水道水とか魚介類の養殖だったり調理現場、医療機関などですね。

一般消費者向けの製品への組み込み例としては、パナソニックがトイレなどへ2018年夏ごろから開発を発表されていました(参考:家庭の水まわりの清潔は、「オゾンウォーター」におまかせ~オゾン溶解の高効率化による小型化を追求した「オゾンウォーター」デバイス)

とはいえ、オゾン水を作って個人がどうこうする製品は今までほぼありませんでした。そんな矢先、クラウドファンディングサービスでオゾン水を自宅で作れるペン型ガジェットとしての触れ込みで『Water Magician(ウォーター マジシャン)』が登場。日本国内での販売価格は1.5万円前後と見られます。販売予定時期は2020年9月頃との事。

Engadget 日本版:ウイルス・感染症対策に。
水道水からオゾン水を作れるペン型ガジェットWater Magician

クラウドファンディングは既に終了しており、あとは一般販売を待つばかりです。

メーカーについて少し調べてみたところ台湾国家品質標章SNQ(台湾での製品安全性や品質審査)の防疫製品カテゴリにて、現地ではFriendly Life社が販売するようで、Blue Oxygen Stick 2.0という型番が記載されていました。

製品の仕様としても、次亜塩素酸ナトリウム水のような健康被害や、酸・アルカリの液性による有毒ガス事故も防ぐことができるため、消毒液として強力に作用しつつも、安全に安く取り扱えそうな製品ですので今は日本国内での一般販売を待ちましょう

オゾン水はウイルス等に有効な消毒液になるのか?

低濃度でも5秒で細菌やウイルスへの不活化効果を発揮

結論としては幅広い細菌やウイルスに効果があります。

前述の製品『Water Magician(ウォーター マジシャン)』だと30mlの水道水に対し、1分間で1.7~2.3ppmのオゾン濃度に達するとのこと。ここではとりあえず2ppmとしましょうか。

岩崎電気株式会社(大手電機メーカー)が掲載しているドキュメント(※PDF)のうち、厚生労働省予防衛生研究所データによればオゾン水生成機の濃度が約1ppm程度、接触時間5秒という短時間で、大腸菌やインフルエンザウイルスを死滅率100%で不活化効果を発揮

三協エアテック株式会社(オゾン関連製品などの開発・製造・販売)のオゾンに関する解説ページで、オゾン水による殺菌効果の表でも同様の効果が記載されていました。

芽胞菌に対しても有効だったオゾン水(3ppm~)

芽胞菌とは、その菌にとって生存環境が悪化すると身を守る「殻」を形成し、摂氏100度で何時間と加熱しても耐え、単純な煮沸消毒では殺菌が難しい厄介な菌類です。食中毒で有名なセレウス菌やウェルシュ菌などがあります。

致死率が高い破傷風菌も芽胞菌の一種で、平時はあまりニュースで取り扱われないですが、東日本大震災では切り傷などから破傷風菌が入ってしまい何例か報告がなされていました。震災では不衛生な泥の中を歩いたり、ケガをすぐに手当できなかったことからリスクが高まりやすかったのでしょう。

破傷風の症例詳細はNIID 国立感染症研究所のIDWR 2012年第45号<速報>東日本大震災に関連した破傷風(東日本大震災関連の破傷風症例についての報告)をご参考ください。

この芽胞菌については殻をもつだけに頑丈で、オゾン水でも一定の濃度が要求されており、一般財団法人 食品分析開発センターSUNATECの『食品工場の微生物制御へのオゾン利用技』によれば、だいたい3~10ppmのオゾン水濃度で殺菌が見込めるとの事。生成できる濃度にもよるでしょうが、手指消毒に対応しているオゾン水生成器であれば災害発生時の初期段階の医療・応急処置に役立てられそうです。

細菌の栄養細胞の場合は0.3~1.0ppmで容易に殺菌することができる。特に、薬剤に耐性のある乳酸菌や大腸菌群には特異的に殺菌効果が大きい。オゾン水殺菌濃度は上記のオゾン水濃度の範囲内ではオゾン水濃度が高いほど殺菌効果が大きい。芽胞の殺菌には栄養細胞の約10倍のオゾン水濃度が必要である
(一財)食品分析開発センターSUNATEC 食品工場の微生物制御へのオゾン利用技術

大量の汚染物などへはオゾン水でも対応は難しい

オゾン水も万能ではなく大量の汚染物、たとえば吐瀉物への対処には不向きというデータも確認できました。なので、『Water Magician』みたいな機器は、あくまでアルコール消毒液のように拭き掃除や手の消毒用としての運用となりそうですね。

国立医薬品食品衛生研究所のドキュメント『ノロウイルスによる食中毒の現状と対策』(※PDF)によれば、吐瀉物で汚染されたカーペットのノロウイルスの除去・不活化にはオゾン水(0.003%)では効果なし。

オゾンは反応性が高いために嘔吐物と反応しまくってノロウイルス不活化には至らなかった模様です。0.003%をppmにすると市販のオゾン水としてはかなりの濃度だと思いますが…、”嘔吐物と反応して、1分以内に消費される“とされていました。

個人的には「散布した量が足りなかったのかな?」と思ったので、東京都健康安全研究センター『ノロウイルス緊急タスクフォース』最終報告書(※PDF)の”5.1.1 カーペットのオゾン消費量”も確認したところ…、

1.模擬吐瀉物をカーペットに撒いた状態を想定
2.模擬吐瀉物を拭き取って90%は回収
3.カーペットにオゾン水を全量散布
4.採用したオゾン水は23ppmのオゾン水50ml
5.1分後にはオゾンは消費されてほぼ検出できなくなってしまった
6.一方、カーペットだけのほうは10分後でも17ppm維持できた

23ppmのオゾン水を50mlもぶちまけてるのに模擬吐瀉物(10%)が残っているエリアは散布してから1分程度でオゾン濃度が検出されなくなるほどになってしまうほど。消毒液を50ml分だなんてその辺がびちゃびちゃになるレベルな訳ですが、オゾン水の性質をよく知って運用したいですね。

消毒液としての用途ならオゾン水を都度生成する

三協エアテック株式会社のFILE006 水温とオゾン濃度ページ、”水温とオゾン濃度の関係 グラフ2.オゾン濃度の減少“や、 セントラルフィルター工業株式会社のオゾン水の安全性の解説でもわかるように、オゾン水は30分程度でオゾンの自己分解が進んでしまってオゾン濃度が大きく低下していきます。

『Water Magician(ウォーター マジシャン)』で生成されるオゾン水を消毒液として用いる場合は、消毒液としてのオゾン濃度の確保と、1分間の短時間で生成できる事も踏まえて、なるべく必要に応じて都度生成するほうが良いでしょう。

消毒液としての必要量については、市販の大きめのスプレーボトルでも一吹き1ml程度ですから1度の生成で30回ほど噴霧が見込めます。オゾンは噴霧動作によっても自己分解が進むほどですので、生成後はそのままボトルから直接散布するほうが濃度は維持できます。

オゾン水生成器の選び方への3つの注目点

持ち運びが楽だと仕事・趣味・防災に活用しやすい

『Water Magician』が良いと感じた部分の一つに、非常に軽量で持ち運びが楽だという事。USB Type-Cでの充電も出来ますからモバイルバッテリー等から給電してその場で消毒液としてのオゾン水を素早く生成することができます。

アルコール消毒液を小型のスプレーボトルに入れて持ち運ぶのも良いですが、ボトル分が尽きてもオゾン水ならすぐ補充できます。

また、新型コロナの時のように需要が急に高まってアルコール消毒液の店舗や通販サイトでの在庫切れの心配も軽減されて心理的にも楽になります。

新型コロナ対策だけでなく、アウトドアの趣味だったり、現場仕事で衛生面の確保が難しい場面で活用しやすくなります。常に持ち運べることで普段遣いへと習慣化がしやすく、結果として食中毒や感染症対策に貢献できます

追加の材料も不要で費用対効果も高い

1度の充電で50回、電池寿命が500回分で50✕500=25,000回のオゾン水生成。オゾン濃度が2ppm前後のオゾン水が30ml✕25,000回で750,000ml、750L分。本体価格が15,000円として50mlあたり1円程度

アルコール消毒液が平時であれば1mlあたり1円くらい(500mlボトルならば約500円)で市販されてましたから、気軽に生成できますね。

また、オゾン水は水道水やミネラルウォーターだけで生成が可能になるため、サブ材料として食塩を用意するとか、酸・アルカリ度を確認しないとダメといった手間や費用が掛からないのも良い点ですね。

実際の運用面では、オゾンの自己分解スピードから考えると生成したオゾン水を全量使わない事もあるでしょうが、それを踏まえても割高感がでないですね。

安全性も高く、本体の長期利用が可能

例えば次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の漂白剤)は有効性も認められているポピュラーな消毒液ですが、購入した時から利用期限が迫ってきます。また、原液は手の表面を溶かす強いアルカリ性でもあるので、保存場所や取り扱いには注意が必要です。

一例までに、ドラッグストアでも手に入りやすい消毒液の一つ、株式会社オーヤラックスのピューラックス(次亜塩素酸ナトリウム)の場合はメーカーの公式サイトによれば製造日から1年間との事でした。

今回のような低電力のオゾン水生成器ですと、薬剤も不使用で漂白剤かのような慎重な取り扱いは求められませんし家電レベルの安全性もあるため、通勤カバンや週末のお出かけ時に気軽にポーチ等へ入れられる点が良いですね。

電池寿命から考えると新規購入すると数年は使えそうですが、電池寿命がくる数年後には技術の進化でさらに改良された機器も登場するでしょうから、予備で何本も導入する必要はないかと思います

安全性と言えば「オゾン水 生成器」とかで検索すると、次亜塩素酸水と同じくよくわからない海外メーカー品が並んでいて、中にはノーブランド品が半値くらいで販売されていたりしますが、まともに動作するのかも不明のためご紹介は致しません。。。

2020年の夏頃に一般流通予定ですので、また続報を更新します。

オゾン水があればアルコール消毒液は不要か?

オゾン水が秀でる部分は確かに多いですが、オゾン水は自己分解スピードが早いために備蓄ができないという弱点があります。

一方、アルコール消毒液は年単位で備蓄が効くため、自宅であれば小分けして複数の場所へおいておけます。ですので、新型コロナ対策以外でも再び感染症リスクが高まった際にはオゾン水と併用して備えるほうが良いでしょう。

オゾン水だけだと平時ではなく感染リスクが高まったときは使う量も場所も増えます。

玄関、トイレ、浴室、キッチン、寝室、ゴミ箱、外出用に…、等と想定した場合はオゾン水だけでは濃度の管理がさすがに面倒です。なにせどんどん自己分解していきますので。

部屋を一斉掃除するためオゾン水を連続的に生成&使用するのであれば自己分解する前にオゾン水を使っていけるので問題にならずオゾン水生成器は便利ですが、必要に応じてたまに1~2mlほど塗布するような使い方は不向きなところがあります。

アルコール消毒液の強みを活かしてオゾン水と共に感染症対策を強化しておきましょう。