防災グッズでいらないものを見極めるには?
まず、不要だと判断する基準については下記のように設定しております。
- 使いこなしにくい事が多く、災害時には不向き
- 費用対効果が悪く、他に良い代用品がある
- 品質が低い可能性があり、被災時の利用に不安
ある防災グッズについて、いるのか?いらないのか?の判断はその人が置かれている環境によっても変化していきます。当ページではなるべく個別の事情に影響しにくいものをピックアップしています。
また、過去の災害についても対策の参考にはなっても、被害が同じようになるとは限りません。例えば東日本大震災では津波や原子力災害、熊本地震では車中泊やテント泊、コロナ禍では感染症対策や分散避難・・・、災害のたびに新たな対応が求められ、『備え方』のアップデートが必要となってきます。
防災グッズでいらないものは?
防災グッズのセット品
費用対効果や満足度がイマイチになりやすい
防災グッズのセット品の欠点として
- ドラッグストア、スーパーなどで普通に買えるものが多い
- 手間なく揃えられそうな一方で、意外と不足品が発生しやすい
- 内容物の品質にバラツキがあり、それぞれの使用感がわからない
こういった部分もあり、あまり魅力的なものが見つかりません。
防災グッズの多くはほぼ日用品ですので、普段の生活の中でついで買っていけば揃います。このためセット品で入手しなければならない必然性は特にありません。そして、内容物の質・量を評価した時に、特に費用を大きく抑えられるわけでもありません。
また、人によって防災グッズとして取り入れておきたいものは異なってきますから、セット品を買っても、後で買い足したり、不要なものを取り出す手間がどのみち発生します。
水で戻すアルファ米が苦手という事で菓子系に切り替えるかもしれませんし、ご自身に合った医薬品(傷薬、風邪薬、鎮痛薬、目薬 など)や、より大判で機能性の高い絆創膏が欲しいと思うかもしれません。
また、馴染みのないメーカーや、どこのメーカーか記載のない製品もあり、災害時に頼りになるのか使用感が事前に掴みにくいところがあります。
オリジナル仕様で結果的に高くついてしまう
例えばバックパックとかはオリジナル仕様である必要性は特にありません。
なぜなら、すでにアウトドアショップで屋外活動向けに十分なノウハウを持つメーカーが国内外で山ほどあるからです。
予算があるならキャンプ用品のメーカー(コールマン、モンベル、パタゴニア、コロンビア・・・何十社とあります)を選べばデザインも豊富です。
オリジナル要素を取り入れると企業としても新規開発コストが掛かり、品質とのバランスが取りにくくなりがちです。これは仕方のない問題です。
バックパックも極端に言えば荷物を入れるただの袋ですが、それでも5,000~10,000円くらいの製品でもだいたい下記のような特徴をもっている事が多いです。
素材 | 耐久性のある厚手ナイロンなど |
ベルトや背面 | クッション性、フィット感、通気性 |
ポケット | 設置場所(内・外)、荷物整理のしやすさ |
サイドポケット | 取り出しやすさ、伸縮性や収納力 |
ファスナー | 開け締めのしやすさ、壊れにくさ |
ストラップ | スタビライザーストラップの有無 |
チェストベルト | 有無の確認、傷みにくさ |
拡張性 | Dカンの設置など |
底部 | 底破れを防ぐ工夫(底鋲や補強材の有無) |
これらは別に登山用でなくても配慮されやすい仕様の一例です。
コストをさらに抑えるなら品質の良い中古品をメルカリで買ったほうがマシな場合すらでてくるでしょう。あまり傷んでないものでも半値以下で手に入る機会もあります。
バッグの品質が低くなりすぎると背負った時の違和感(肩周りや背中にフィットしない、クッション性が低すぎるなど)も強くなり、長距離の移動となった場合に苦しくなります。
セット品での安心感が逆効果につながる恐れ
手間なく買い揃えることも便利なのですが、防災グッズをさわる機会や考える機会がないと、防災バッグの存在も薄れていきます。
急ぎで用意しなければならない場合でも、コンビニ、スーパー、ディスカウントショップ、ドラッグストア、家電量販店などで入手可能なものは沢山あります。
各種保存期間については1年ごとの点検も兼ねて、在庫の補充&消費(ローリングストック)をしたほうが良いでしょう。保存期間が5~10年といった極端に長い商品にこだわりすぎると商品の選択肢も減ってしまいます。
「お手軽に買い揃えられるセット品に一切のメリットはないのか!?」・・・と言えばそうでもありません。
企業のように大量の従業員に対して素早く供給しなければならない、といった状況ならばその強みを発揮できるかと思います。もちろん、企業によって災害への備え方や事業継続計画も異なるでしょうから、BTOパソコンのようにカスタマイズできる仕組みがあれば頼りになりそうですね。
ロウソク
照明として使うならばLEDライト
照明として使うのであれば、明るさや点灯時間でも優れるLEDライトがおすすめです。照明でなく防水・防湿剤としての用途(蝋引き加工)もありますが、防災グッズとしての出番は少なそうです。
最近のLEDライトは乾電池2本でも10~20時間点灯し続ける性能があります。広範囲を照らすのであればLEDランタンを選び、暖色(電球色)に切り替えられる製品なら屋内での使用時に暖かい雰囲気も出ます。
GENTOS EX-366Dは対応できる電池が3種と専用充電池1種に加え、調光や暖色切り替えもできるLEDランタン。屋内でフルパワー(1000ルーメン)を使うことは少ないかもしれませんが機能としてはほぼ揃っています。
バッテリーは普段も使う頻度が高めならば充電式メイン、備蓄向けならアルカリ電池式が良いでしょう。アルカリ電池の長期保存はエボルタをおすすめします。
エボルタはアルカリ電池としての単価は高いのですが、液漏れしにくさを追求しています。
ダイソーのアルカリ乾電池で1本20円程度(DAISO&S 5本入り等)と比較されて、バッテリーの容量検証でエボルタが切ない一面もあった模様ですが・・・、長期保存で早々に液漏れされても困るのでやはりエボルタに、という判断です。
表面フラッシュ現象など火災に注意
ロウソクだと余震での転倒で可燃物に引火したり、ロウソクを持ち歩いて照明代わりにしていると火災にもつながりやすくなります。
特に冬場は何かと着込みがちですが、ロウソクの炎が小さいからと思って油断してると表面フラッシュ現象による着衣着火の危険性も高まります。
表面フラッシュ現象は毛羽立った衣類などに発生しやすく、火が走るように燃え広がるためパニックにも陥りやすい事故の一つで年間100件の死者が出ています。
参考:消費者庁 着衣着火に対する注意喚起について(※PDF)
この現象は衣類だけに限ったことでなく、表面がきめ細かくフワフワしてるような素材は想像以上に燃え広がるスピードが速い場合があり、身の回りの家具にも注意が必要です。
湯を沸かす熱源ならカセットコンロなどを検討
ロウソクも使えないことはないですが、火力が弱くて大量の本数を必要とします。
ロウソクはガスボンベや燃料用アルコールよりも危険性が低く、燃料というジャンルでは取り扱いがしやすいですが、火力が弱いと「家族分のカップ麺の湯を沸かしたら何時間も経過してた・・・」みたいな事になってしまいます。
レトルト調理や汁物など熱源を必要とする場合は、カセットコンロや固形アルコール燃料などを用意したほうが良いでしょう。
避難生活の期間をどこまで想定するかで備蓄本数も決まってきますが、3~4人家族で1本2日もたせるよう節約しながら使ったとしても1ヶ月間で15本は必要になります。
カセットコンロやボンベを製造・販売する岩谷産業株式会社の公式サイトではボンベの使用期限は製造から7年あるため、鍋物にするときはカセットコンロを適度に使う習慣を付け加えると在庫を更新しながら備蓄ができます。
固形アルコール燃料は100円均一ショップでも販売されるほどポピュラーで安全性は高いほうですが、燃料の蒸気が食材に触れることを避けるためか直火調理はしないよう注意書きがあります。取り扱い方法は一通り確認しておきましょう。
ロウソクが余っていれば削って着火剤
メタルマッチで手元にあるティッシュ等に火をつけられたものの、用意できた木材になかなか燃え移らない場合の着火剤として使えます。
揮発性の液体燃料のような危険性もなく、普段は固体で経年劣化もしにくい性質なので取り扱いや長期保管もしやすいメリットがあります。
ただ、そもそも着火剤自体が安価のため、新たにロウソクを備蓄するほどの優位性は無いと思います。
不要なロウソクがあれば捨てずに保管したり、削って小物入れに入れておくと着火剤や補助的な燃料として役立ちます。
明るさ不足なLEDライト
利用シーンを考慮して上位機種を選ぶ
キーホルダーのようなLEDライトは普段、夜間の鍵穴確認やちょっとした落とし物を探す時には使えますが、防災グッズとしてはちょっとパワー不足です。
利用シーンとして、交通機関マヒ&停電などで帰宅困難者となった方や、夜間の避難経路の路面を把握するならば相応の明るさが必要です。一例として懐中電灯と明るさを比較した検証記事もありますのでご確認ください。
LEDライトのうち両手が空くヘッドライトは便利なものの、小走りするとヘッドライトの重みで照らしている部分が振られたり、走りにくかったりする場合があります。
そんなヘッドライトの悩みを軽減するライトとして、タジマのSF351Dがあります。こちらは電気工事や高所作業で使われる製品ですがアウトドアにも使う方もおられます。
災害時の夜間は平時と違って停電で街灯や商店の看板といった街明かりも消えていきますので、都市部でも真っ暗になります。
上記は静岡放送が報じた2021年2月13日の停電の様子ですが、福島県沖から遠く離れた静岡でも停電が発生しました。なお、原因の詳細は経済産業省 資源エネルギー庁のページでも解説されています。
LEDヘッドライトの利用頻度が高くない方はバッテリーの経年劣化や充電忘れを考慮し、乾電池式のほうが良いでしょう。行動範囲の広さに応じて予備の電池を追加で所持しておくと安心です。
LEDヘッドライトの性能について
明るさの目安については、夜間停電時の避難でも頼れるレベルが良いでしょう。広めに照らせる自転車用のライトがイメージとして近いと思います。
ライトは単に遠くまで照らせるだけで選ばず、夜中でも活動しやすくなるように光の広がり具合も重要です。光が身体の左右に広がっていると、とっさの出来事にも対応しやすくなります。
もちろん、遠くを照らせる性能も地震で損傷した建物などの安全確認するという意味では重要です。避難先までの道のりも遠くまで見通せたほうが当然安全につながります。
しかし、「広く照らせて遠く離れたところも明るい」・・・みたいな性能をLEDヘッドライトだけに求めると大型化してしまい、持ち運びにくかったり、頭への重みで動きにくかったりもします。
どれくらいまで備えるかは個人次第なところもありますが、無理にヘッドライトだけで完結させようとせず、手に持つタイプと併用するとバランスがよくなると思います。
自作の防災グッズ類
ツナ缶ランプや、新聞紙スリッパなどは防災教育の一環として取り組む分には良いですが、実用面では取り扱いにくかったり、思わぬ事故に繋がる場合があります。
例えばヘルメットやライフジャケットなど直接身体を防護する製品には、ちゃんと安全基準が設けられており、様々な試験に合格して流通しています。
ツナ缶ランプも照明としてはロウソクと同様に暗いですし、火災予防のためにも火気自体を無闇に使わないほうが良いです(※あくまで、火を照明とするには不向きな場面が多いというだけです)。
新聞紙スリッパも滑りやすくて転倒の危険もあり、地震や台風被害などで散乱したガラス片で足を踏み抜いてしまうなど、新聞紙を何枚か重ねた程度ではケガ防止には不向きな仕上がりになってしまいます。
柔軟な思考・対応力を身につける意味では有用
色んな日用雑貨を自作していく事自体は、工具類を上手く使いこなしたり、物資が不足する非常時でも柔軟な対応力を身につけてく上でも有用です。
サラダ油がどんな仕組みで燃えて、どれくらいの時間燃焼して、どうすれば災害時に役立てられるか・・・そんな取り組みを継続すれば、仮に手ぶらで被災しても乗り越えていく力も身についていくでしょう。
自作製品にこだわって安全性が損なわれる事態は避けるべきですが、自助力は私たち全員が高めていかねばならない問題ですので、DIYのような活動はむしろ推奨です。
缶切り、ナイフ、長いロープなど
あまり出番のなく荷物になってしまいやすい
一部、下記ページでも触れていますが、使いこなすことが難しかったり、避難先での出番があまりないのが主な理由です。
これらも自作防災グッズの件と同様、防災教育の一環として取り組む分には良いですが、日常的に使えていないと災害時には活用しにくいです。
出番がないのであれば、他の利用頻度が高い製品を多めに入れて避難の長期化に備えたり、携行品から除外して防災リュックの軽量化も図れます。
工具類はある程度の大きさがないと、力を入れにくいですし、扱い方をミスってケガもしやすくなります(特に刃がついた製品はご注意ください)。
被災経験を持つ方の声をどう反映すべきか?
実際に災害に遭って避難所へ向かったり、帰宅困難者となったり、野営しなければならなかった被災経験は、これから備える方にとっては新たな気付きを得る機会も多く防災・減災を見直していくのに貴重な情報となります。
ただし、被災経験は1人1人異なってきます。
例えば同じ地震を経験しても「震度6を経験したけど被害はあまりなくてその場でどうにかできたよ」という方もいれば、「津波に巻き込まれて気を失い、目が覚めたらどこかの病院だった・・・」という方もいるでしょう。
そうなると、被災経験や備えに対する考え方にはどうしても温度差が出てきます。
照明1つとっても「スマホのライトで十分だった」という経験談があったとしても、それは避難所まで近かったり、停電が起きなかったり、行き交う車のヘッドライトを光源にできていたかもしれません。
被災経験談からは、自身がその状況に陥ったならば
- どんな備えがあればよかったか?
- 自宅はもっと状況が悪化する恐れはないのか?
- 同様のリスクは身の回りにないか?
と、点検するような感じで身の回りの『想定外』を対策していきましょう。